社会変革のための
プロジェクト

2026/09/13

“負の資産”だった森を、世界的企業が注目した理由

放置される森を、地域を豊かにするビジネスへ変えるライフルタイルブランド社長の挑戦

 


目の前に、一脚の椅子があります。
美しく磨かれた木肌。
人の身体を受け止める、なめらかな曲線。

 

ブランド名は分かります。
つくった会社も分かります。

 

しかし、その椅子に使われた木が、どこの森で育ち、誰に切り出され、どの町を通ってここまで来たのかを知る人は、ほとんどいません。

「この木は、どこから来たのだろう?」

 

その小さな疑問が、佐藤岳利さんを、日本の森が抱える大きな問題へと導きました。

 

佐藤さんは、建築、内装、家具、雑貨、日本の伝統工芸など、ものづくりの世界に約36年間携わってきました。

 

乃村工藝社で9年間経験を積み、その後、自らワイス・ワイスを創業。27年間にわたって、家具や空間づくりを通じて、人々の暮らしに豊かさを届けてきました。

 

木の美しさも、温かさも、可能性も知っています。

 

だからこそ、その木が生まれた場所で何が起きているのかを知ったとき、見過ごすことができませんでした。

 

 

全国で起きている「森」の問題

 


日本の国土の約67%は森林です。


森は、木材を供給するだけの場所ではありません。

酸素を生み、水を蓄え、生き物を育み、土砂災害から地域を守っています。私たちが意識していないところで、森は今も暮らしと命を支え続けています。

 

その経済的価値は、年間約70兆円にもなるといわれています。

 

それほど大きな価値を持つ森が、全国各地で荒れていました。

 

手入れされず、光が入らなくなった暗い森。
倒れたまま放置された木。
山を覆うように広がる竹。
大雨のたびに高まる土砂崩れの危険。

 

森が価値を失ったわけではありません。

 

価値を受け取る仕組みが、失われていたのです。

 

佐藤さんの調べでは、私有林の36.9%が所有者不明の状態にあります。

 

 

しかし、全国の地域を自ら歩いてきた佐藤さんの実感は、その数字よりも深刻でした。

 

場所によっては、70%、80%もの森林が、誰のものか分からないに等しい状態になっているといいます。

 

「祖父が、どこかに山を持っていたらしい」
「相続したはずだが、場所が分からない」
「所有者の名前はあるが、その人が今どこにいるのか分からない」

 

所有者が見つかりません。

見つかっても、境界が分かりません。
境界が分かっても、管理する人がいません。
仮にすべてが分かったとしても、別の問題が待っています。

 

山を持てば、税金や管理費がかかります。

自然災害が起きたときには、責任を負う可能性もあります。

 

それならば、木を切って売ればよい。
そう考えて計算すると、木を売って得られる金額より、伐採し、山から運び出し、市場へ届ける費用のほうが高くなることがあります。

 

売れば赤字になります。
持てば負担になります。
放置すれば森が荒れます。

 

どの道を選んでも、出口が見えません。

 

本来は地域の宝であるはずの森が、所有者から「持っていても仕方がない」と思われる存在になっていました。

 

 

木を扱う仕事だからこそ森の問題に向き合う

 

 

荒れた森を見ながら、佐藤さんの中に一つの問いが残りました。

 

自分はこれまで、森から生まれた木を使って仕事をしてきました。

 

家具をつくり、空間をつくり、木の価値を伝えてきました。

 

しかし、その木が育った森に、何を返してきたのでしょうか。

 

森林を守ろうと呼びかけることはできます。ボランティアを募り、山に入り、木を整備することもできます。

 

しかし、人の善意だけに頼った活動は、いつか続かなくなります。

 

森を管理するには、人が必要です。
時間が必要です。

 

そして、お金が必要です。
「守らなければならないから守る」だけでは、森林を次の世代まで残せません。

 

森を守ることが地域の仕事になり、生活を支える収入にならなければ、この問題は終わらないのです。

 

では、どうすればよいのでしょうか。

 

答えは、遠くにはありませんでした。

 

佐藤さんが36年間、触れ続けてきた木の中にあったのです。

 


放置される森が、パタゴニアやスターバックスが注目する森へ

 

 

家具や建築、店舗をつくるとき、遠くから運ばれてきた木材を使う前に、その地域の近くにある木を使えないか考えます。

 

それが、佐藤さんの見つけた最初の答えでした。

 

地域の木が使われれば、木を育てる人に仕事が生まれます。伐採する人、運ぶ人、製材する人、家具や建築に加工する人にも仕事が生まれます。

 

一つの家具をつくることが、森の手入れにつながります。

 

一つの店舗をつくることが、地域に仕事とお金を届けます。

 

その循環を生み出すため、佐藤さんは木材を選ぶときに、価格や見た目だけでなく、その背景を確かめるようになりました。

 

この木は、どこで育ったのでしょうか。

誰が切ったのでしょうか。
合法的に生産されたものなのでしょうか。
原産地までたどることができるのでしょうか。

 

完成品からは見えなくなっていた森と人を、もう一度つなぎ直していきました。

 

その取り組みは、やがて企業の目にも留まります。

 

環境問題に長く向き合ってきたパタゴニアと、店舗で使う木材や地域資源の調達に取り組みました。

 

スターバックスとは、店舗を出す場所から半径約30km以内にある素材を、できる限り活用する店づくりにも挑戦しました。

 

遠くから材料を運び、どこでも同じ店舗をつくるのではありません。

 

その土地にある木を使い、その土地の人に仕事を届け、その地域だからこそ生まれる空間をつくります。

 

「持っていても仕方がない」と思われていた森の木が、企業から求められる資源へと変わり始めました。

 

森を守ることと、企業が価値を生み出すことは両立できます。

 

佐藤さんは、それを理念だけで終わらせず、実際の仕事として示していきました。

 

 

木を売るだけでは救えない

 

 

しかし、地域材の利用が進めば、すべての問題が解決するわけではありません。


森によっては、木材を切り出すこと自体が困難です。

 

どれだけ工夫しても、木を販売するだけでは採算が合わない地域もあります。


せっかく見つけた答えにも、届かない森があります。


そこで佐藤さんは、もう一度、森の価値を見つめ直しました。


森が生み出せるものは、本当に木材だけなのでしょうか。


森の中を歩くと、呼吸が深くなります。


木々の間に身を置くと、都市では聞こえなかった音が聞こえます。


人は森で遊び、身体を動かし、学び、誰かと語り合います。


木を切らなくても、森は人に価値を与えています。


その価値を仕事に変える方法として見つけたのが、「森林サービス産業」でした。


キャンプ、トレッキング、サイクリング、自然観察、地域の食を楽しむ観光。


森林浴、ヨガ、ウォーキングなど、心身を整える健康サービス。


子どもの自然体験、学校教育、社員研修、チームづくりの場としての活用。


森を「木を切って売る場所」から、人が訪れ、学び、健康になり、地域とつながる場所へ変えていきます。


木材だけでは採算が合わなかった森にも、人が訪れる理由が生まれます。

地域に宿泊や飲食、案内、教育などの仕事が生まれます。


森を残すことが、地域を豊かにするビジネスになるのです。


佐藤さんが探していたのは、一時的に森を救う方法ではありませんでした。


人が森と関わるほど、森も地域も豊かになっていく仕組みだったのです。

 

佐藤さんが掲げるテーマは、
「森と共にある豊かな未来」です。


地域の木を、地域で使います。
森に人が訪れる理由をつくります。
地域に仕事とお金を循環させます。
森を次の世代へ受け渡していきます。


かつて家具を通じて、人の暮らしを豊かにしてきた佐藤さん。


今、その視線は、家具の向こう側にある森へ向けられています。


最初の問いは、今も変わりません。


「この木は、どこから来たのだろう?」


しかし、その問いに続く言葉は変わりました。


「この森を、次の世代へどう渡すのか?」


森には、まだ価値があります。


価値が失われたのではありません。


私たちが、その価値とのつながりを見失っていただけなのです。

 

 

一社の実践が社会を変える力へと増幅

 


佐藤さんが参加する「経営実践研究会」は、志ある地域企業が、本業を通じて社会課題を解決し、仲間とともに持続可能な社会をつくる団体です。


ここで問われるのは、経営のやり方だけではありません。


何のために会社を経営するのでしょうか。
誰を幸せにするために、自社は存在するのでしょうか。
自分たちの本業で、どの社会課題を解決するのでしょうか。


経営者自身が志と在り方を磨き、本業を通じて社会的価値と経済的価値を生み出す「未来創造企業」を目指します。


そして、自社だけの成功で終わらせず、その実践を地域へ、全国へ伝えていきます。


一人では動かせない問題も、志を共有する人たちが、それぞれの経験や技術を持ち寄れば、動かせるかもしれません。


佐藤さんが経営実践研究会に可能性を感じているのも、そのつながりがあるからです。

 

 

佐藤さんの言葉を、直接聞いてみませんか?

 

 

2026年のソーシャルシンポジウムのテーマは、
「日本の未来を創る 地域企業の挑戦」


本業を通じて社会課題の解決に挑む経営者たちが、その実践と志を伝えるシンポジウムです。


この舞台に、佐藤さんも登壇します。


なぜ、建築や家具の世界で36年歩んできた経営者が、全国の森を回る道を選んだのでしょうか。


なぜ、年間約70兆円もの価値を生む森が、「持っていても仕方がない負担」になってしまったのでしょうか。


地域の木を使う取り組みは、どのようにパタゴニアやスターバックスとの仕事につながったのでしょうか。


そして、木材利用と森林サービス産業によって、どのような未来をつくろうとしているのでしょうか。


記事では伝えきれない現場の現実、迷い、決断、そして挑戦への覚悟を、佐藤さん本人の言葉で聞くことができます。


佐藤さんの話を聞いたとき、あなたの会社が長年培ってきた技術や経験にも、新しい意味が見つかるかもしれません。

 

地域で負担だと思われているものにも、まだ知られていない価値が眠っているかもしれません。


志は、胸の中にあるだけでは社会を変えられません。


誰かに届き、共感が生まれ、人と人がつながり、行動になったとき、初めて社会を動かす力になります。


ソーシャルシンポジウムは、その志が人から人へと動き始める場所です。


佐藤さんの挑戦に触れ、あなた自身の「本業でできること」を考えてみませんか。

 


▼開催概要・プログラム・参加申し込みはこちら
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【ソーシャルシンポジウム2026】
テーマ:日本の未来を創る 地域企業の挑戦

 

【大阪】
日時:2026年10月18日(日)
会場:梅田スカイビル

 

【東京】 佐藤さん登壇!
2026年11月21日(土)
有明セントラルタワーホール&カンファレンス

 

詳細・お申し込みはこちら
⇒ https://www.keijitsukai.jp/event/20261018so/

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━