社会変革のための
プロジェクト
- 2026/04/28
分かち合える社会を、地域からつくる──森建築板金工業の挑戦(有限会社 森建築板金工業 森 亮介 氏)

「奪い合うのではなく、分かち合える社会をつくりたい。」
そう語るのは、奈良県大和高田市に本社を構える森建築板金工業の4代目、森亮介氏です。
同社は大正15年創業。創業当初は、リアカーを引きながら壊れた鍋を修理し、物々交換で生計を立てていたといいます。
そこから約100年にわたり、屋根や外壁といった住まいの外回りを守り続けてきました。
時代がどれだけ変わっても、「人の役に立つ」という本質は変わらない。
森氏はそう実感していると語ります。
同社が大切にしているのは、「忍・恩返師・仲間」という3つの言葉。
思いやりを持ち、感謝し、支え合う。その価値観は、長年地域に必要とされ続けてきた理由そのものです。
しかし今、森板金が向き合っているのは「屋根を直す」ことだけではありません。
その先にある、“地域の未来そのもの”です。
事例企業情報
・森建築板金工業
・大正15年創業
・活動エリア 奈良県
・代表者 森 亮介 氏
※本記事の内容は2025年4月の会員プレゼンテーション(CLミーティング)の動画をもとに作成しています。
災害のあとではなく、「その前」にできること

日本は災害が多い国です。台風や地震のたびに住宅被害が発生し、復旧には多くの時間と人手が必要になります。
一方で、その混乱に乗じて、悪徳業者や詐欺といった問題も発生します。
不安につけ込み、高額な工事を契約させる。そうした現実を、森氏は現場で何度も見てきました。
だからこそ同社は、「壊れてから直す」のではなく、「壊れる前に守る」ことに力を入れています。
森板金が掲げるのは、「災害対策企業」という新しいあり方です。
建設業の枠を超え、地域の企業や学校、行政と連携しながら、災害を未然に防ぐ取り組みを広げています。

その象徴的な活動が、「こども建設王国」です。
このイベントでは、子どもたちが職人の仕事を実際に体験します。
目的は大きく3つ。
仕事の魅力を伝えること、地域の信頼関係を育むこと、そして防災意識を高めることです。
楽しみながら学ぶ体験を通じて、未来の担い手を育てると同時に、地域に「顔の見える関係」を生み出していきます。
つながりが、防災になる

森板金の取り組みの本質は、「つながり」にあります。
たとえば、地域の小学校と連携した塗装プロジェクトでは、子どもたち自身が校舎やプールサイドを塗り直します。
自分たちの手で環境を良くする経験が、地域への愛着と主体性を育てていきます。

また、大阪拠点では「ローリングストック」を推奨しています。
備蓄食品を定期的に入れ替えながら消費することで、無理なく災害への備えを続ける仕組みです。
さらにユニークなのが、「屋根の点検ご褒美カレー」です。
屋根点検という日常の予防行動を促すための工夫であり、「防災を自分ごとにする」ためのきっかけづくりでもあります。
加えて、奈良県警と連携した詐欺防止の啓発活動も行っています。
訪問時に直接住民と対話し、顔を合わせる関係を築くことで、犯罪の抑止にもつなげています。
これらに共通しているのは、「普段からの関係性」です。
災害時に本当に頼れるのは、日頃からつながっている人や企業です。
森氏は、「つながりそのものが、防災になる」と言います。

地域とともに成長する企業という選択
こうした取り組みは、社会貢献で終わっていません。
むしろ、企業としての成長にも確実につながっています。
実際に同社では、取り組みを進める中で利益率が向上し、紹介による受注も増加しました。
「何かあれば森さんに」——そんな言葉が地域に広がりつつあります。
重要なのは、その利益をどう使うかです。
森板金では、イベントや防災活動、商品開発といった形で地域へ還元し、価値を循環させています。
この循環こそが、持続的な企業成長の土台になります。
森氏は今後、この取り組みを全国へ広げていく構想を描いています。

建設業に限らず、さまざまな業種と連携し、各地域に「災害対策企業」のネットワークをつくる。
平時はつながりを育み、有事には支え合う。
競争だけではなく、協力によって価値を生み出す社会へ。
「誰もがつながり、助け合いながら生きる世界をつくりたい。」
その言葉は、100年続く企業の覚悟であり、次の時代への提案でもあります。
志を伝えるプレゼンテーション動画
森さんの取り組みは、経営実践研究会内で行っているプレゼンテーション(CLミーティング)の動画で知ることができます。
ご覧ください。
有限会社 森建築板金工業 森 亮介 氏
地域の100の課題から100のビジネスを創出する
私たち経営実践研究会では、地域企業(中小企業)が中心となり、各地で企業・自治体・様々な社会活動に取り組む方々と連携しています。
経営実践研究会は、強い輝きを放つ地域企業(中小企業)を多く輩出し、事業を通じた社会課題解決に向けた活動を行い、持続可能な社会を構築していきます。