社会変革のための
プロジェクト
- 2026/10/10
子どもの未来を、生まれた環境だけで決めない!学校×家庭×地域企業で、選べる未来を増やす挑戦の物語

16万人に夢を届けて気づいた「足りないもの」。子どもの挑戦を支える地域企業の役割とは?
「これは、お母さんの夢で、自分の夢じゃない」
自分の未来について考える、小学校の授業。
6年生の男の子が、そうつぶやきました。
あなたなら、その言葉をどう受け止めるでしょうか。
夢を考えるはずの時間に、その子が気づいたのは、描いている未来が自分の願いではないということでした。
では、自分はどんな未来を望んでいるのか。ほかに、どんな生き方があるのか。
その答えを探すには、自分の気持ちを確かめる時間と、まだ知らない世界との出会いが必要です。
地域の企業は、子どもたちが知らない仕事を毎日しています。
けれど、その仕事と子どもが出会う機会は、どれだけあるでしょうか。
乳幼児から大人の再就職まで、30年間、教育に関わってきた三輪裕子さん(NPO法人 こどものみらいプロジェクト ゆめドリ)は、子どもが自分の人生を選ぶための「きっかけ」と、その先を支える「環境」をつくろうとしています。
その挑戦の原点には、三輪さん自身の家族の姿がありました。
怖かった父の奥に、知らなかった人生があった

三輪さんの父は、大阪府警の少年課の刑事でした。
非行に走った少年たちと真正面から向き合う、正義感の強い人。
その厳しさは家でも変わらず、筋の通らないことは、子ども相手でもとことん追求しました。
三輪さんは言い返すことができました。
しかし、2歳下の弟は、父との関係が次第に難しくなっていきます。
後には、約7年間、引きこもった時期もありました。
そんなとき、母がぽろりと言いました。
「お父さんも、早くに自分のお父さん亡くしてるからな」
その一言で、父の見え方が変わりました。
厳しい父。
怖い父。
その父自身にも、父親を早くに失った時間があったのです。
「お父さんって、分からないまま父親をやってたのかもしれない」
親子関係や生き方について学ぶ中で、三輪さんは、世代をまたいで影響が続くことがあると知ります。
そして、考えるようになりました。
人は、知らない生き方を選ぶことが難しいのではないか。
父も、弟も、そして自分も。
だったら、違う生き方に出会うことができれば、選べる道は増えるのではないか。
三輪さんは大学で家族社会学を学び、児童相談所や児童養護施設の実習へ進みました。
しかし、なんとかしたくて学んだ先で、思い知らされたのは、自分にできることの少なさでした。
助けたい気持ちだけでは、届かなかった

実習先で出会ったのは、すでに大きな問題を抱えた家族でした。
目の前の現実は、想像していたよりもずっと重い。
20歳そこそこの三輪さんには、無力感しかありませんでした。
助けたいと思っている。
それなのに、支える力が足りない。
そこで、問いが変わります。
「問題が大きくなる前に、何かできることはないだろうか?」
苦しみが深くなる前に、別の道に出会える機会があったら。
自分はどうしたいのかを考えられる時間があったら。
人が自分の人生を選べるようになるために、いつ、どんなきっかけを届ければいいのか。
その問いを抱えながら、三輪さんは教育の仕事に関わり続けました。
37歳で出会った、「何度でも書き直していい」夢

転機は、37歳のときに訪れました。
出会ったのは、「ドリームマップ」です。
そこで考える夢は、将来の職業をひとつに決めることではありません。
私は、何が好きなのだろう。どうありたいのだろう。
自分に問いを向けて未来を描き、違うと思ったら何度でも書き直していい。
三輪さんは、その考え方に可能性を感じました。
「夢は、未来を決めるものではなく、自分の未来を自分で考え始めるきっかけになるんじゃないか」
今すぐ、正解を出さなくていい。
自分の気持ちから考え始めていい。
長く抱えてきた問いに、ひとつの手がかりが見えました。
三輪さんは、学校で子どもたちにドリームマップを届ける活動に関わるようになります。
ところが、その機会を届け続けること自体が難しくなる、活動の危機が訪れました。
やめれば楽になる。それでも「もうできません」と言えなかった

さまざまな事情が重なり、このままでは学校での活動を続けられなくなる。
三輪さんは、何度も迷いました。
「私がやる必要、あるんかな」
「もう、やめた方が楽なんじゃないかな」
それでも、そのたびに浮かぶ顔がありました。
授業を待っている先生。
一緒に動いてくれている仲間。
そして、その先にいる子どもたち。
その子たちを思うと、「もうできません」とは言えませんでした。
三輪さんは代表を引き継ぎ、2026年9月の発表時点から9年前に、NPO法人を立ち上げます。
けれど、法人をつくれば、続けられるわけではありませんでした。
「思いだけでは続かない」
人がいる。
資金がいる。
仕組みもいる。
届けたい思いを、実際に届け続けられる活動にする。
その難しさを、三輪さんは苦い学びとして語っています。
たくさんの人に支えられ、活動をつないできました。
三輪さんが関わるドリームマップの活動は、25年間で、延べ16万人以上に届けられてきたといいます。
その積み重ねは、大きな財産でした。
しかし、届けてきたからこそ、新たな課題が見えてきます。
16万人に夢を届けても、足りなかったもの

そもそも、夢を考える機会に出会えない子どもがいる。
そして、出会えたとしても、「やってみたい」の先につながる環境があるとは限らない。
挑戦できる場所がない。
どうすればいいか分からない。
その気持ちを受け止めてくれる人がいない。
それでは、せっかく生まれた一歩が止まってしまいます。
夢を描くきっかけだけでは、足りなかった。
だったら、その一歩が続いていく環境までつくる必要がある。
描いて、やってみる。
違ったら、また選び直す。
その過程を支える人や場所が、子どもの周りにあってほしい。
その可能性を示す、一人の女の子の事例があります。
「宇宙食をつくりたい」が、地域の工場につながった

小学4年生のとき、その子が描いた夢は「宇宙食をつくりたい」でした。
その夢を、お母さんが見守りました。
そして、地域の工場ともつながりました。
高校生になった今、宇宙食の認証を目指すところまで進んでいるといいます。
夢を描く授業から、現実の仕事につながる挑戦へ。
その間にいたのは、
夢を見守る人、
応援する人、
次の出会いにつなぐ人でした。
三輪さんが伝えたいのは、夢の大きさではありません。
周りに支える人がいることで、子どもの一歩は続いていくということです。
この話を、企業の側から見てみると、もうひとつの可能性が見えてきます。
地域の工場が持つ仕事や経験。
それが、子どもにとって、未来へ進むための力になったのです。
あなたの会社にも、毎日使っている技術や、積み重ねてきた経験があるはずです。
その「当たり前」は、ある子にとって、まだ知らない未来の入口かもしれません。
生まれた家庭の外にも、選べる未来をつくる

子どもは、生まれる家庭を選べません。
だからこそ、家庭環境によって、出会える人や仕事、未来の選択肢まで決まってほしくない。
三輪さんが目指すのは、学校を入口に、家庭と地域企業をつなぐ環境です。
学校を、子どもたちが社会と出会う場所にする。
子どもの「やってみたい」を、地域にある人、仕事、経験につないでいく。
その構想が、学校・家庭・地域企業を夢でつなぐ「教育ハブ」です。
学校だけで支えることの限界も、三輪さんは感じてきました。
先生だけに背負ってもらうのではなく、社会全体で子どもを育てていく。
その関わりの中で、大人も地域も共に育つことを目指しています。
構想は、これから形にしていく段階です。
2026年末までに学校や地域の声を聞いて基本モデルをつくり、実施できる仕組みへ磨き、他の地域にも広げられる形を目指します。
「もちろん、これで教育のすべてが変わるとは思っていません」
それでも、三輪さんは30年間、出会いをきっかけに人生を選び直す人を見てきました。
「全部を変えられなくても、まずひとつ、選択肢が増える環境をつくりたい。
それをやらずにはいられないんです」
冒頭の男の子の言葉も、三輪さんは、自分の人生を考え始めた一歩だったのかもしれないと受け止めています。
「これは、お母さんの夢で、自分の夢じゃない」
その先で、自分の願いを探せるように。
知らなかった道に出会い、試し、選び直せるように。
三輪さんの挑戦は、今、地域の企業にも出番を問いかけています。
あなたの会社は、誰の「選べる未来」を増やせるでしょうか

子どもは、知らない仕事や生き方を選ぶことが難しい。
それは、私たち経営者にも通じるのかもしれません。
自社の技術や経験が、社会のどんな課題に生かせるのか。
日々の経営だけでは、その可能性に気づく機会が少ないこともあるでしょう。
教育の課題と、工場の仕事。
一見離れたものがつながったように、自社の仕事にも、まだ気づいていない役割があるかもしれません。
そんな可能性を問い、仲間とともに実践していく共同体が、経営実践研究会です。
大切にしているのは、「何のために経営するのか」「誰のために会社は存在するのか」を問い直し、本業を通じて社会課題を解決すること。
企業、行政、教育、NPO、金融など、多様な立場の人が知恵や力を持ち寄り、一社では難しい挑戦を前へ進めていきます。
自社の仕事で、誰の可能性を広げられるのか。
その答えを探す入口として、実際に挑戦している人たちの言葉に触れる機会があります。
三輪さんの話を直接聞いてみませんか?
自社の可能性を、実践者との出会いから

2026年11月(大阪)と12月(東京)にて開催される
「ソーシャルシンポジウム2026」のテーマは、「日本の未来を創る 地域企業の挑戦」。
本業を通じて社会課題の解決に取り組む経営者や実践者が集まり、その志と実践を伝えます。
大阪会場には、三輪裕子さんも登壇します。
記事を通じて触れた挑戦を、今度は本人の言葉で聞く。
そして、ほかの実践にも触れながら、「自社の仕事では、何ができるだろう」と考えてみる。
自社の技術や経験を地域に生かしたい方。
社会課題に取り組みたいけれど、何から始めればよいか分からない方。
同じ志を持つ仲間と出会いたい方に、参加していただきたい機会です。
子どもの選択肢が、新しい世界との出会いで増えていくように、会社の可能性も、人の挑戦に触れることで広がるかもしれません。
あなたの会社の「当たり前」を、誰の未来につなげられるのか。
その可能性を、会場で確かめてみませんか。
【ソーシャルシンポジウム2026】
テーマ:日本の未来を創る 地域企業の挑戦
【大阪|三輪裕子さん登壇】
日時:2026年10月18日(日)
会場:梅田スカイビル
【東京】
日時:2026年11月21日(土)
会場:有明セントラルタワーホール&カンファレンス
懇親会では、登壇者・参加者の方々と、直接ゆっくり話せる時間をご用意します。
あなたの会社の「当たり前」が、社会の未来を変える力になる。
その可能性を、会場で見つけてみませんか。