社会変革のための
プロジェクト
- 2026/04/13
教育から新しい時代をつくる。熊本発オルタナティブスクール「WING SCHOOL」の挑戦(一般社団法人WING SCHOOL 田上 善浩 氏)

「教育界から、新しい時代をつくりたい。」
そう語るのは、熊本市でオルタナティブスクール「WING SCHOOL」を運営する田上善浩さん。現在、全国から集まる100名以上の小中学生がこの学校で学び、日々新しい挑戦を続けています。
教育の現場で長年子どもたちと向き合ってきた田上氏がたどり着いた結論は、「教育のあり方そのものを変えなければ、日本の未来は変わらない」ということでした。
地域の企業が社会課題の解決に挑む時代において、教育の分野から社会を変えようとする一人の教育者の挑戦が、今広がり始めています。
事例企業情報
・一般社団法人WING SCHOOL
- ・2018年設立
・活動エリア 熊本県
・代表者 田上 善浩 氏
※本記事の内容は2025年7月の会員プレゼンテーション(CLミーティング)の動画をもとに作成しています。
「教師になる」と決めていた少年が直面した壁
田上氏は、物心ついた頃から教師になることを決めていました。
しかし、いざ教育の現場に立つと大きな壁にぶつかります。それは「人前で話すことが苦手」という弱点でした。そこで田上氏は演劇に挑戦します。人前で表現する経験を重ねることで、少しずつ話すことへの苦手意識を克服していきました。
それでも、子どもたちとのコミュニケーションは簡単ではありませんでした。
そこで次に取り組んだのが「学級通信」です。毎日、子どもたちへのメッセージを書き続け、1年間で200号以上を発行しました
授業も学級経営も試行錯誤の連続でしたが、努力を重ねる中で、子どもたちが主体的に学ぶ授業へと変化していきます。
やがて英語のディベートやビジネスプラン発表など、実践的な授業を行うクラスへと成長し、生徒たちは自分たちで企画を立て、プロジェクトを実行する力を身につけていきました。
この取り組みはやがて「中学の奇跡」と呼ばれるようになります。

日本の教育が抱える深刻な課題

しかし、田上氏は次第に日本の教育全体に強い危機感を抱くようになります。
内閣府の調査では、「自分自身に満足している」と答えた若者はわずか10%程度。
社会問題の解決に関わりたいと考える若者も同じく約10%という結果でした。
また、不登校の子どもは増え続け、大学を卒業しても3年以内に離職する若者は3割以上にのぼります。さらに、若者の死因の第1位は自殺という現実があります。
田上氏はこう語ります。
「子どもたちは、小さい頃から『どうせ無理』という空気の中で育っているのではないか」
決められたルールに従うだけの学校生活の中で、「自分たちの行動で社会を変えられる」という体験をする機会が少ない。その結果、大人になっても「どうせ変わらない」と感じてしまうのではないか——。
そう考えた田上氏は、教育そのものを変える挑戦を始めます。
子どもたちが社会を動かす「WING SCHOOL」

その挑戦が、熊本市で開校した「WING SCHOOL」です。
この学校の教育は、3つの柱で構成されています。
① 感性
自然体験や多様な活動を通じて、子どもたちの感性を広げる。
② 知性
単なる暗記ではなく、「なぜそうなるのか」を考える学びを重視する。
③ 創性(プロジェクト力)
子どもたち自身が企画し、実行する力を育てる。
例えば修学旅行では、行き先や予算、交通手段まで、すべて子どもたち自身が決めます。必要なお金も自分たちで稼ぎます。ある年は北海道旅行を計画しましたが、資金が足りず広島旅行に変更になりました。 それも含めて大切な学びです。
午後の時間には、それぞれの興味をとことん追求します。
折り紙に夢中になる子、コーヒーを淹れて地域の人に振る舞う子、イラストで仕事を受ける子など、子どもたちは自分の好きなことを社会とつなげていきます。
その結果、卒業生の中には海外大会への出場や地域プロジェクトのリーダーとして活躍する若者も生まれています。
教育を変えるために、大学をつくる

WING SCHOOLは多くの共感を呼び、新校舎の建設にも挑戦しました。
資金は5億円。
「無理ではないか」という声もありましたが、わずか2か月で資金を集めることができました。
そして今、田上氏はさらに大きな挑戦に取り組んでいます。
それは教師を育てる大学の設立です。
現在の教員養成は、現場経験の少ない大学教員が講義を行い、教育実習も短期間で終わってしまうことが多いといいます。
「料理を10回しか作ったことがない人が、レストランのシェフになるようなものです」
現場で活躍する教育者が若い教師を育てる仕組みをつくり、長期間の教育実習を通じて本物の教師を育てる大学をつくりたい。この構想は、総事業費40億円規模のプロジェクトです。
企業版ふるさと納税などの仕組みを活用しながら実現を目指しています。
教育が変われば、社会は変わる

田上氏の挑戦の原点は、「子どもたちが社会を変えられると信じられる教育をつくりたい」という想いです。
教育が変われば、人が変わります。
人が変われば、企業が変わります。
そして社会そのものが変わっていきます。
「教育から新しい時代をつくる」
熊本から始まったこの挑戦は、今、全国へ広がろうとしています。
志を伝えるプレゼンテーション動画
田上さんの取り組みの詳細は、経営実践研究会内で毎月行っているオンラインプレゼンテーション(CLミーティング)の動画で知ることができます。下記動画をご覧ください。
一般社団法人WING SCHOOL 田上 善浩 氏
私たち経営実践研究会では、地域企業(中小企業)が中心となり、各地で企業・自治体・様々な社会活動に取り組む方々と連携しています。
経営実践研究会は、強い輝きを放つ地域企業(中小企業)を多く輩出し、事業を通じた社会課題解決に向けた活動を行い、持続可能な社会を構築していきます。
田上さんが代表プレゼンテーションに登壇する10周年記念フォーラムはこちら
2026年6月28日に大阪で開催の「10周年記念フォーラム西日本会場」では、田上さんが代表プレゼンテーションに登壇。
10周年記念フォーラムの詳細はこちらをご覧ください。
