委員会活動
Committee activity
重製紙企業組合 代表理事
みの市民エネルギー 代表取締役
NIPPONI美濃商家町 代表 辻 晃一氏(以下、辻)
インタビュアー:郡上エネルギー株式会社 代表取締役 小森 胤樹(以下、小森)
小森:本日は、丸重製紙企業組合 代表理事、みの市民エネルギー 代表取締役、NIPPONIA美濃商家町の代表を務める辻晃一さんにお話しを伺います。 辻さん、改めましてよろしくお願いします。 まず、初めに辻さんが家業である、丸重製紙企業組合に戻ってくることになるまでの経緯をお話いただけますか。
辻:はい、大学は東京の大学に行きました。
その時に初めて美濃から都会にでまして、二つ驚いたことが有ります。
一つは世の中の皆さんが川で泳ぐってことが普通でなかったこと。夏に“川で泳ぎたいね”って話をしたら、??
というような反応をもらいまして、近くの川で泳げるってことは素晴らしいことなんだってことに気が付きました。
もう一つは自分が標準語では無かったということ(笑)。
それで客観的に故郷を意識しだしたというか、田舎ではあるけど嫌だなという反面、いいとこなんだと、どこまでも客観視できるようになりました。
小森:何年東京にいらしたのでしょうか。
辻:大学4年間と社会人になって一時名古屋にいましたが、東京に戻り、合計8年ぐらい地元を離れていましたね。もちろん盆暮れは帰ってきていましたけど。
小森:戻ってこようと決心した一番の動機は?
辻:前職はベンチャー企業に勤めていて、ちょうど上場っていうのを経験できたんですね。
サラリーマンとしてですけども、社長の近くで仕事をすることができたので、社長から、“辻君、起業はいいよ、ベンチャーだよ。
起業で上場すると、金持ちになれるよ”と。
実際社長がそうなっていたわけですから。
自分の中で、起業という選択肢が出来たんですね。
起業したいと思うようになったんですけど、やりたいことがないのに、起業なんて出来ない。
やりたいこともない自分に凹みましたね。
ちょうどそのころに、父親からそろそろ帰ってこないかという話をされたんですけど、そう儲からないから嫌だなっていうのが率直な意見でした。けれど、ゼロから会社を作ることも起業ですけど、今あるもの、言い方悪いですけど、駄目なっている家業をリバイバルさせるっていうのもベンチャーじゃないかなと思ったら、もう一度ちょっとやる気になったのと、そう言っても冷静に考えたらまず儲からないでしょうということで、さっきお話したように、ちょっと視点を変えて故郷を客観的に見て、いいところもいっぱいあるからそれをビジネスの力でどうにかしたいと思うようになりました。
税金って皆さんだいたい文句言うケースが多いじゃないですか。
やっぱり行政とか税金の悪口が非常に世の中多いですよね、じゃあビジネスで経済循環を作れるような仕組みにしたら、これはおもしろいビジネスモデルって言い方がいいのかわかんないですけども、そういわゆるソーシャルビジネスですね。
これができたらすごく面白いし、それなりの経済規模にもなるんじゃないかなと思ったらすごくやる気になりました。
まず、一種のベンチャーであるということと、やっぱり自分がその地域を元気にするっていうことにモチベーションが湧いたってことですね。
やっぱりそのワクワク感っていうのが大きかったかなと思います。
小森:ありがとうございます。
私が辻さんと最初にご縁頂いたのは、岐阜県のモノづくりの研修に参加して、工場見学させてもらったことでした。
10年近く前になるんじゃないでしょうか。その後、間が空いて、辻さんから久しぶりに連絡が来ます。
辻:連絡をしたのもきっかけがあって、ずっと和紙以外も含めて、ソーシャルビジネスやってこうと思うんすけど、そうやっても和紙が本業なんでずっと5、6年やったときに、ちょっと1個大きな仕事がなくなったタイミングだったんですね。
その時に“地域とか言ってるんじゃないよ”と天に問うことがあったんですね、この大きな仕事が無くなるというのは、どういうメッセージなんだと考えたんですね。
そんなね、地域とか言わすに、まず自分の足元の仕事をしっかりやり直しなさいっていうことなのか、いやいや、だから中途半端にそんなこと言ってなくて本気になって事業で地域の再生に取り組むということなのか、どっちなんでしょうねっていうのを自分の中で自問自答しました。
いや、前だ、前に進もうってことで、その和紙以外でもなんかやろうってことで、なんとなく紙にも使う木や森について、気になっていたので、漠然とした話を小森さんにしに行ったというのがいきさつでしたね。
何か、紙以外の事を本気でやろうと思ったんですね。
小森:私も当時、郡上から出ていく、木質バイオマスとしても木材を地域内でエネルギーとして利用できないことに、疑問を抱いていた時でした。
辻:他にも東京の知り合いに、“ビジネスで地域を元気にしたいんだ”という話をしたときに、面白い社長紹介するわと紹介されたのが、当時ワタミファーム&エナジーの社長だった、小出浩平社長だったんですね。
そのときに小売電力事業を紹介してもらったんです、皆さんの電気代を地域循環させるってのがすごい地域貢献に役立つ仕組みだから、ぜひ地域電力会社っていうのを、ワタミファーム&エナジ―としても、全国に作りたいんだって話を聞いたときに、面白い仕組みだなあと思って。
前職ベンチャーでもそういうやっぱりストックビジネス的戦略を学べたし、何より投資がかからないし、これは地域にすごくいいなと思ったんで、もうその場でやりましょう、美濃には僕が作りますと話をしてきました。
一か月後に美濃で勉強会をやる約束をして、その勉強会に小森さんも良かったら参加しませんかと誘ったのが始まりでしたね。
小森:それが2016年の5月ですよ、その勉強会で私も辻さんと同じように郡上に作りますと約束しましたね。
辻:そう。そっから始まったんですね。
小森:次、現在、丸重製紙企業組合とみの市民エネルギーを運営しつつ、さらに現在どんな取り組みをされているのでしょうか?
辻:その電力事業は、本当に自分の中ではこんなのがあるんだって新しい発見だったんですけどその前からやっぱり地域のことは目を向けたんで、色々活動していたんですけど、この街並みって僕、実は美濃市民なんですけど、まともに歩いたことないんですよ。
もともとここは商店街なんで昔は買い物にきていた。
でもちっちゃいときに、ジャスコができて、そっち行っちゃうから、本当に来ることがなくなってて、商店街を歩くことが無くなっていたんですね。
それがこうやってお客さん連れてくることも増えたんで、案内するとああ、中々いい街なんだなあ、こんな店があるんだなあと再発見すると同時に、空き家がいっぱいあるなと思って、昔は栄えたけど今こんなんかって思ったときに、空き家問題っていうのが自分の中に早い段階で有って、空き家対策しないといかんなあ、みたいなことはあったんですね。
だからまずはタイミング的にはエネルギー事業が先だったんですけど、これは別に僕のタイミングというよりも、これが(NIPPONIA美濃商家町になる空き家)ちょうと美濃市に寄付をされて、誰かやりませんかって言う公募がされたときに、元々ちょっと関心があった和紙のお店作って、流通革命とか世界中から和紙を買いにね、美濃に来てもらえるようなそんな店作りたいなってビジョンあったんで、その蔵を使ってやりたいなっていうのがあったんですけどちょっと、建物全部の提案では大き過ぎるんで、はじめ諦めていた所に、ノオトさん(一般社団法人ノオト)から人の紹介で声がかかって、一緒にやらないかと。
そういうタイミングだって、自分の中では、空き家対策、古民家対策をなんとかせねばということがアンテナとして有ったので、それもエネルギー事業と一緒で、あったその日にやりましょうって言うのと同じで、そのノオトの代表から、声かけられた時も、今日岐阜に来てるんで会いませんか言われて、岐阜駅まで会いに行って、話聞いて、2億6000万かかるんですけどって言われて、でも向こうがやるっていうから、もうやりましょうかって言ってやるって返事をして帰ってきたっていう感じです。
そして、地元の工務店さんとか設計士の力を結集して、NIPPONIA美濃商家町が誕生するという運びになったわけです。
もちろん、ホテルの電気はみの市民エネルギーから供給しています。
最初から小さな循環は始まっているかなと思っています。
小森:外部の人の手を借りたりして地元で新しいこと始めているわけですが、地元との軋轢は生じなかったのでしょうか?
辻:正直僕自身もあんまり考えてないしそれを感じてなくて、もともとやっぱ何だろうこれといって、この町で率先して何かやってる人がいない現状で、僕も青年会議所をやってましたし、早い段階で、フェイスブックで美濃の街を元気にとか、美濃和紙を元気にみたいな発信をずっとやってたんで、私の本業を知らない人からは、街づくりのNPOやっている人と思われるぐらい美濃の街を元気にみたいなこと言ってたんで、あいつがやるなら、またあいつか、みたいななんかそんな感じで、あんまり反対とかはなかったんじゃないかなとは思ってますけど、ただ直接入ってこないですよね。
直接言うのは、もっとすごくやってくださいっていうだけの話で、やっぱり実践するっていうのは強いと思いますね。
小森:2件目のホテルももうすぐ開業することも決まっているそうですが、今後の展望について、何かありますか。
辻:ありますね、もともと地域でも、地域を元気にする事業、美濃を元気にするための事業って1個じゃないですか当然、要は全部やらなきゃいけないわけですね。必要とされるものは。
だからやらないといけないことは無数にありますっていうのが結論ですけど、そうやって無数にできるわけでもないので、これは本当に人とモノとのタイミングですよね。
自分でやりたいタイミングではなくてここからはその人とのご縁とか事業とのタイミングと物件のタイミングに沿って、どうせ全部やるんだから、来たものはやってこうって思ってるスタンスで、古民家を1個送り出したら、10個ぐらいいろいろ何か案件が積み重なって、じゃあ今度今は全部ホテルですけど、全部ホテルにしてもしょうがないんで、今1個はは長屋を利用して、シェアオフィス、やっぱり住む人働く人が必要で、
これからちょうどコロナで、サテライトオフィスのニーズが高まるんで、やっぱりその企業をそれこそ大企業の資本をどう地方に分散させるかって結構自分の中で大事なことかなと思ってるんで、そうしたサテライトオフィスを引っ張ってくるとかも含めて、そういうのがあると、
町の中にホテルで滞在するだけなく、ちょっと仕事もしようかなとか、滞在時間も伸びてくるだろうし、そこにカフェいれたいねとか、
シェアキッチン作りたいとか、自転車ライドシェアもあったらいいねとか、そういうシェアリング事業を今後やりたいなと思ったりとか、逆にみの市民エネルギーも利益出してるんで、次のあれとして農業とかを地元で頑張っていることを応援するような形で農業者を増やしたりとか、
あとはお弁当宅配ですね。ちょうど見学してもらった工場(丸重製紙企業組合の工場)のある場所なんかは、美濃市でも奥で、毛細血管の先っぽの方に位置するんですね。ワタミの宅食ってあるじゃないですか。
あれって、街の中心部までは配達できるんですね。奥の人は困るんですよね、NPOが別の宅配弁当の配達をやってたりするんですけども、やっているNPOが高齢化で、もう宅配もできなくなってきている。
ここに、僕がワンクッション入って、毛細血管の先まで届けるシステムが作れないかなとか、いうことを今考えています。今日はそれこそ林業なんかでも何かチャンスがあれば、やりたいと思っています。
小森:話を伺っていて、美濃市役所の機能が街の中に分散して、今の市庁舎を取り壊さないんだったら、どこかの企業の本社を市庁舎に移しますみたいな形も有なのかなと思いました。
辻:1社だけでなくてもいいですよね、3階までありますから。
社員の人は町の中の空き家に住む。
辻:それ、いいですね。そのアイデア頂いておきます(笑)
<プロフィール>辻 晃一さん
丸重製紙企業組合 理事長
みの市民エネルギー 代表取締役
みのまちや株式会社 代表取締役
丸使命は「美濃と和紙を元氣にする」!
SDGsを軸に、和紙製造&販売、観光、 エネルギー、古民家再生、まちづくり、農業、教育、福祉など、 美濃市で 「持続可能な地域循環共生圏」構築にむけて毎日顔晴っております!
インタビュアー
<プロフィール>小森 胤樹さん
郡上エネルギー株式会社 代表取締役
https://www.facebook.com/gujoenergy/1971年 大阪生まれ 大阪育ち。
関西大学大学院工学研究科修了。
2002 年 岐阜県郡上市へI ターンし、林業の現場作業員となり、
2012 年に雇用先の林業会社の代表となる。
2017 年 郡上全体の森林管理を仕事にするべく、民間事業体の代表を辞し、森林総合監理士として独立し、郡上エネルギー株式会社を設立。
2018 年から郡上市の林務行政のアドバイザーも兼任。
地域の循環社会に向けて様々なチャレンジを行っている。