インタビュー|高津玉枝氏【福市】愛情と洗練された感覚で、フェアトレードを広めたい

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高津玉枝氏【福市】愛情と洗練された感覚で、フェアトレードを広めたい

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愛情と洗練された感覚で、フェアトレードを広めたい

発展途上国で作られた作物や製品を適正な価格で継続的に取引することで、生産者の持続的な生活向上を支える「フェアトレード」。日本でまだ認知度が低かった2000年にフェアトレードと出会って以来、社会問題に関心のある層ではなく、ファッションへの関心が高い層をターゲットに機能性やデザイン性の高い商品を提供し、自分の気に入った商品から社会問題について知ってもらおうと事業を展開する、1人の女性起業家がいる。
東日本大震災後には、東北復興支援プロジェクトも立ち上げ、「各国各地の生産者が仕事に誇りをもち、正当な報酬を得られ、暮らしが安定するよう自らの力で市場を開拓できるようになるまで、寄り添うことが最終目標」と語る、株式会社福市 代表取締役 高津玉枝氏に話を聞く。<編集部より>

フェアトレードとの出会い ~大量生産・大量消費社会への疑問~

有限会社ティ・アール・コーポレーション 代表取締役 福森鈴子(以下、福森):現在の事業内容と、どのような経緯があったのかを教えてください。

 

株式会社福市 代表取締役 高津玉枝(以下、高津):「Love&sense」という、フェアトレードのセレクトショップを運営しています。私は1991年にマーケティング会社を設立し、そこから約20年間、マーケティングの仕事をしてきました。商業施設などのアドバイザーをさせていただいたり、PRの仕事をさせていただいたりといった活動をしていました。

しかし、1990年代後半に転機が訪れました。バブル経済崩壊に伴うデフレの影響で、安いものがどんどん求められる時代になってきたのです。
それまでは「素敵なものにスポットライトを当て、どのように表に出していくのか」が私の仕事の基本でしたが、クライアントに利益を提供しないといけませんから、次第に時代が求める、「安価なものを提供することを促進する」役割に変化せざるを得なくなりました。
そのことに自分でも違和感を感じ始めていた時、フェアトレードに出会ったのです。

 

福森:最初に「フェアトレード」という言葉やその概念を聞いた時は、どのような印象を持たれましたか。

 

高津:言葉を聞いた時に、「発展途上国の貧困」というのは何となくイメージできて、そういったことをマーケティングの力で助けられたらいいな、と思っていました。
しかし、現地に行くと実は違って、私たちの過度の大量生産・大量消費のしわ寄せが見え隠れし、結局、貧困という問題は私たちと無関係ではなく、私たちの行き過ぎた資本主義も少なからず影響しているということに気づきました。
そこで、「じゃあ、自分がこれからどんなふうに仕事をしていくのか」と考えた時に、「いつの日か、フェアトレードに関わる仕事をしたいな」と考えたのが事業のきっかけです。

現地で見た衝撃の光景

高津:2000年、インドに行った時に見た光景を、今でも必ずプレゼンテーションで見せています。インドでは化学染料のカスが野ざらしになっており、その地域には上下水道が通っていないので、井戸水で生活している人の健康に被害が及ぶこともあります。
では、なぜその場所で作っているのかというと、安くできるからです。日本だと環境について厳しい規制があったり、法律があったりします。しかし、そのようなものがないところであれば、低コストでできますし、現地の人たちも仕事がほしくて引き受けてしまいます。そのようなことを目の当たりにしました。
また、今まで物々交換で成り立っていたところに貨幣経済が入ってきて、正当な取引ができずに貧困のスパイラルに陥っていき、人身売買などが起こることもあります。このような経済システムの弊害があり、さまざまな理由で貧困が起きています。

しかし、人身売買があった村で、NGO(非政府組織。貧困、飢餓、環境などの世界的な問題に対し、民間の立場から、利益を目的とせずこれらの問題に取り組む団体)などが入り、紙すきのプロジェクトをスタートすることにより、それがなくなった、というような動きも少なからず存在します。そういったプロジェクトをどのようにサポートしていけるのか?というのも、私の仕事の軸になっています。

生産者にも「ハッピー」を届けるフェアトレードへ転換

福森:高津さんが実際に現地に入られて、自分自身と現地で起きている問題に関連性を感じたことが、使命感につながっているのでしょうか。

 

高津:結局、売り上げをめざすことだけを考えていれば、基本的に私もそれに参加せざるを得ませんでしたが、もっとふさわしい方法で問題解決できると思ったのです。例えば、ものを売るにしても、「途上国の人をサポートするようなものを、どう売るのか」ということにフォーカスしたほうが、精神的にはハッピーですよね。そういうことに変えていけないのかな、と感じたのです。

この問題で一番重要なのはシステムの問題であり、流通業の人が、3%でも5%でもいいからフェアトレード商品を取り扱い品目の中に入れてくだされば、すごく変わりますよね。それを積極的にPRしながら流通業の方にもいろいろとアプローチをかけましたが、当時は全く関心を得られませんでした。
2006年度においてもフェアトレードの認知度は3%、というデータがあります。つまり、私がフェアトレードに取り組み始めた2000年代前半の時代には、ほとんどの方がご存知なかったのです。
しかし、流通業界が変わらないことにはシステムが変わらないので、「流通業界におけるフェアトレードの立ち位置や取り組み」をどうするか、というのが問題でしたね。

 

福森:フェアトレードについての認知度は、上がってきているのでしょうか。

 

高津:以前に比べれば、だいぶ上がっています。消費者教育などもあって、高校生や大学生の授業などにも入っていますので、今は認知度40%を超えています。しかし、流通業としての取り組みはまだまだですね。

「誰でも知っていて気軽に立ち寄れる」商業施設に出店

福森:発展途上国に貨幣経済が入り、お金が必要になって働かざるを得ない状況の中で、人身売買などの問題が起きたりする。それでも、フェアトレードの方が幸せなんでしょうか。

 

高津:それは難しい問題ですね。途上国の人たちも、スマートフォンやテレビがほしいです。けれど、スマートフォンで市場相場を見られる人がいくら儲けたとしても、物々交換をしている人はそこに入っていけないのです。

単純には語れませんが、「日本人はこのような問題を知らない」というそのものが問題です。もちろん今の時代に日本で暮らしていて、「買い物を止めて、仙人のような暮らしをしろ」と言ってもそれは無理な話なので、この社会の中でどうすればいいのかということです。

「自分たちに何が必要か」と考えた時に、流通に携わっている人たちに意識してもらうことが重要だと考えました。流通業界の人たち自身が、「発展途上国の貧困な人たちが作ったものが売れる訳がない」と考えているところもあるので、一番の近道は見本を見せることだと思い、作ったのが「Love&sense」です。

最初は、ロフト名古屋でお店を始めました。私は誰もが知っている商業施設でしかやらないと決めていました。なぜなら、フェアトレードの商品が好きな人が集まる場所に出しても既存のプレイヤーとの競争になるだけで意味がなく、既存の市場と全く関係のないところに行かないと、この問題を知らない人たちに広がらない、そして流通業界にインパクトを与えられたらという思いがあったからです。そのような考えに基づき、流通業を意識してフェアトレードに取り組んだのは、たぶん私たちが初めてですし、百貨店の本店に常設店を持ったのも私たちが初めてです。

社会的な課題に接点を持てば、ビジネスチャンスは大きく広がる

福森:これからのビジョンと、事業展開について教えてください。

 

高津:お店は、二桁成長しています。儲かるかどうかは分かりませんが、さまざまな人の参入によりマーケットが広がることが一番大切だと思っているので、そこを促進していきたいですね。

 

福森:女性が当事者意識を持って問題に取り組むことが重要だと思うのですが、現地に足を運び、当事者意識を持たれている高津さんの視点から、同じ女性経営者として経済に対しての考え方や、在り方についてのアドバイスをお聞かせください。

 

高津:会社というのは本来、何か「このようなものがあればいいな」というところから生まれているものだと思います。
男女の性別に関わらず、誰でも起業する時には「何かをしたい」「この問題を解決したい」というルーツを必ず持っていたはずです。それをいつの間にかどこかに置き忘れ、忘れ去られてしまうようなケースがあるので、もう一度自分を見つめ直すことにより、視野がすごく広がるような気がします。

同時に、その中で社会問題をどう解決していくか、そこにビジネスのポイントがあると思います。
自分がしていて気持ちがいいこと、特に女性は自分がしていて気持ちがよくないことはあまりできない傾向があるので、それと社会的な課題がうまくかみ合えば、すごくビジネスチャンスは広がると思います。

社会的な課題を、ビジネスの手法で解決できる支援者を育成

福森:当たり前なのですが、まだまだ売り上げ重視の経営が多いということも実感しています。

 

高津:そうですね。昨年(2015年)、京都市と一緒に「イノベーション・キュレーター塾」をスタートさせました。私はそこで塾長を務めているのですが、これはイノベーション・キュレーター(組織内外で、中長期的な観点から、組織の社会性を経営者と共に考え、社会的課題の解決をビジネスとして継続させる伴走者)を育てる目的でやっています。社会的起業の促進、および企業の内部からもアプローチをかけていくものです。

「イノベーション・キュレーター塾」は前期6回・後期4回あり、ソーシャルビジネス(地域社会の課題解決に向けた、住民、NPO、企業などが協力しながらビジネスの手法を活用した取り組み)の基礎や世界で何が起こっているかを学び、事業を起こした人の話を聞いたり、自分のプランをブラッシュアップしたりと、手間のかかることをやっています。

まだ実験段階ですが、時間をかけながらやっていかないと、線として繋がっていかないので、必要なことだと思います。「本業の中でやっていけば、そこにビジネスチャンスがありますよ」ということなんですね。これによってどれだけ社会に影響を与えられるかというのは、まだまだ未知数ですが、手ごたえを感じています。

 

福森:やはり、環境づくりなどは「積み重ね」ですよね。

 

高津:気づくポイントも人によって違いますし。ポイントとなる部分は、手を変え品を変えて、気づくところまで持っていくしかないですよね。
時間はかかりますが、イメージできる人たちを見て、「あんなふうになりたいな」とか、「素敵かも」と思ってもらえるようなことは必要かなと思いました。

「おしゃれ」「ステキ」から始まる社会貢献

高津:フェアトレードと言うと、エスニックなイメージがあります。やはり、女の人は「素敵でありたい」と思う訳で、それをどう見せていくのかということが近道だと、私は感じました。フェアトレードについて説教じみた説明をしても、「素敵でありたい」と思わないですよね。それを持っていることが「素敵だよね」と思っていただけるかどうかが重要だと思います。

例えばプルタブバッグ(リサイクルしたアルミ缶のプルタブが編み込まれてできたバッグ)などを持ってパーティーに行くと、話題になります。そうするとフェアトレードを自分の知識を混ぜて語ることになるので、なぜブラジルの女性は働かなければならないかが分かってきます。
「持っている人」が、かっこいいと思ってもらえれば、他の人も「早くそれを持ちたいな」と思う訳で、それが近道なのではないかと考えています。

 

福森:プルタブバッグ、素敵ですよね!正直なところ、今までフェアトレードの商品に素敵というイメージはありませんでした。

洗練された商品でなければ、生産者を支える「継続」が難しい

高津:お情けだと、2回は買っても3回は買わないんです。
実は、2015年10月にバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが開催している女性のリーダーを育てるプログラム「グローバル・アンバサダー・プログラム」に参加してきました。ホテル椿山荘東京で、メンター(指導者・助言者)やメンティー(メンターから助言・指導を受ける者)の仲間と1週間まるまる一緒に過ごしました。
メンターは外交官や各国の女性トップリーダーですが、その方たちが持っているものは、いわゆるラグジュアリーブランドではなかったのです。途上国で自ら応援している団体の商品だったり、素敵なストーリーのあるものだったのです。

グローバルに活躍している方々が、自分が今いるステージで自己主張・自己表現できるものは何かと考えた時に、結果、フェアトレード商品であったということです。皆さん私の持ち物に関心を持ってくださり、「マーケットプレイス」というイベントがあったのですが、皆さんこぞって「Love&sense」の商品を買って帰られました。

まずは「共感を呼ぶこと」が大切

高津:もちろん日々の会社事業も重要ですが、「途上国で自ら応援している団体の商品だったり、素敵なストーリーのあるものを持つ」ことによっても、女性経営者はアピールしていく時代だと思います。
ファッションから入って「素敵だな」と思ってもらい、「それが実は・・・」という話ができれば、当人、また世の中に変化が生まれます。

遠回りのように見えますが、資本主義の課題について話すよりも、このほうが分かりやすいかも、と思っています。
エルメスやヴィトンなどのブランド商品が悪いと言ってる訳ではありません。そのブランドの次に自分たちをアピールできるものが何かと考えた時に、それがフェアトレード商品へのアプローチになればいいなと思います。「素敵だな」というところから入ったほうが自然ですよね。

学生さんに話すときによく言うのですが、東日本大震災復興支援への寄付回数を尋ねてみるとほとんどの人が1回です。しかし、例えば被災地で作ったプロジェクト商品なら繰り返し買うことができます。これこそが意味のあることだと思います。

 

福森:やはり、見せることから始まりますね。

 

高津:私は女性同士で応援していただきたいと思っています。
百貨店でお店を成長させていくことは、外からみると格好良く見えますが、内情はとても大変です。一般の製品と戦う訳ですし、ここで肩を叩かれてしまうと、私たちが思っていることは実現できませんから、スタッフも必死になってやっています。
そのためにメデイアにもPRする訳ですから、同じ女性同士で支えてもらえたらすごく嬉しいです。

価格は少し高いかもしれないですが、「社会を変えていこう」という気持ちで支えていただきたいです。
自社の宣伝をしているように聞こえますが、実際そうなんです。私たちがやりたいことはガンガン売り上げを伸ばすことではなく、いろいろな人たちがお店に来てくれて、がんばっていると評価をもらい、生産者にも恩恵が渡っていくことです。

ですから、もし皆さんの本業の中ではできなくても、例えばプレゼントなどで配るものの中に組み入れてもらえれば、皆さんも1つの素敵な「チェンジ」に加担していることになると思います。

女性の話題にしてくれることから始まり、話題というツールにのって、その人自身もリスペクト(敬意を表す)されますよね。女性経営者は、そう言ったことで自分の立ち位置を示すことも大切ではないかと思います。
そうすれば、また違うリスペクトを得ることができますよね。うまく繋げて届けていくことが私たちの役割でもあります。

作り手の人たちに無理はさせない。その中で商品に魅力を感じて頂けるようバランスを保つ

福森:やはり、その舞台裏には、生の声を聞かないと分からないような、大変なご苦労もあるんでしょうね。

 

高津:取引先は国際的なフェアトレード認証機関から認定されているところが8割で、残りは自分で足を運び見つけたパートナーです。
作り手の人たちに無理はさせないように気を払っています。彼らの労力の中でどのようにして作ってもらうかということが、私たちのクリエイティブな部分ですね。
普通のメーカーさんよりも100倍くらい大変ですよ。フェアトレードの団体とやっているので、彼らがオファーしてくるコストの中にNGOが入り、値段を決めてくる訳です。

お客様の気持ちとしてはいろいろあると思いますが、できれば理解をしてもらいつつ、それでも「素敵かも」と持っていただけるというバランスを保つことが必要な訳ですから、苦労することも多いです。

無理して買ってほしいとは思っていませんが、持っているその人も輝いて見えます。
行き着くところは、何と言ってもグローバルな女性のリーダーたちが、それをすごく大事にしているということです。ですから、同じ女性の経営者に支えていただければ嬉しいなと思います。

 

福森:普通の経営でも大変なのに、本当に素晴らしいです。当事者意識を持てば変わっていきますよね。これからもいろいろなことを教えてください。ありがとうございました。

【在り方Webより 高津玉枝氏【福市】愛情と洗練された感覚で、フェアトレードを広めたい

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<プロフィール高津 玉枝氏

株式会社 福市 代表取締役
大学卒業後、富士ゼロックスに入社。雑貨商社を経て、1991年にマーケティング会社を設立。家庭用品・インテリアなどで百貨店や、製造業の業態開発・PR事業を行う。大量消費・大量生産に疑問を感じた90年代後半、フェアトレードの概念に出会う。
2006年に株式会社福市を設立。フェアトレードのセレクトショップLove&senseを 表参道ヒルズで立ち上げ、百貨店などでイベント出店。2012年に阪急百貨店うめだ本店に直営ショップをオープン。
東日本大震災後には、東北支援プロジェクト「EAST LOOP」 を立ち上げる。6500万円以上の売り上げをつくり、200人以上の女性に手仕事を通じて、収入と生きる力を届けた。現在、事業を東北に移管中。経済産業省・復興庁から、東北支援のための事業を受託。
http://shop.love-sense.jp/

インタビュアー福森 鈴子氏

有限会社ティ・アール・コーポレーション 代表取締役
一般社団法人 エメラルド倶楽部 関西支部 支部長
1992年に下着販売の代理店を設立し、全国各地でランジェリーインストラクターの育成をスタート。
1997年から全国42都道府県に、女性の社会進出をするため「女性の自立」をテーマに、女性リーダー育成ブラッシュアップセミナーの講演活動を開始。
美容事業、スクール事業、複合サロン事業など事業を多角化展開。
2010年から一般社団法人 エメラルド倶楽部 理事 兼 関西支部長に就任し。女性経営者のネットワーク創りに参画。
http://www.eyebrow.co.jp/

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