入会案内

参加申込み

お問い合わせ

委員会活動
Committee activity

水井 裕氏ココナッツを貧困問題解決の光明に

  • Clip to Evernote
  •  
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ココナッツを貧困問題解決の光明に

この数年でその効能に注目が集まり、ブームに火がついた「ココナッツオイル」。日本ではココナッツオイルという名前すら知られていなかった2004年にココナッツの専門ブランドを創業し、フリーマーケットやイベントでの対面販売で信頼を積み重ねながら、商品の認知拡大を図ってきた会社がある。
今回のゲストは「ココウェル」代表の水井裕氏。起業の原点は意外にも、自身が現地で目にしたフィリピンの貧困問題にあると言う。<編集部より>

水井裕氏 株式会社ココウェル 代表取締役

ゴミ山を漁る子どもたちの姿に衝撃

株式会社シーエフエス 代表取締役 藤岡俊雄(以下、藤岡):事業を始めた動機は、どのようなことだったのでしょうか?

 
株式会社ココウェル 代表取締役 水井裕(以下、水井):ココウェルは2004年に設立し、現在12年目になります。
私は元々環境の勉強をしており、発展途上国の環境問題に興味がありました。
私が大学生だった1997年には、COP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議、京都会議)で京都議定書が採択されましたが、COP3の開催に先だって、大学でも環境関連の授業の一環として、模擬会議をすることになりました。学生たちが半年くらいかけて事前調査をして、模擬会議では各国の代表を演じたのですが、その時私に与えられたのが、フィリピン大統領の役でした。

元から関心があったとは言え、この経験が、発展途上国の立場から環境問題を考える第一歩になりました。
大学では英語を勉強していたのですが、大学卒業後も環境問題を学びたいと思い、環境の専門学校に進みました。実際に発展途上国に行きたいと思い、専門学校の長期休暇を利用して、3か月間、フィリピンの大学に留学したのです。
フィリピンの大学では環境科学について学び、授業では、さまざまな場所を見て回りました。
大学のツアーで、フィリピンの首都マニラの「スモーキー・マウンテン」と呼ばれるゴミ山にも行きました。
そこで私が見たのは、ゴミ山を子どもたちが漁り、プラスチックや鉄屑などを採取してお金に変えている光景でした。「ゴミ山をどう処理し、リサイクルするか」という環境問題以前に、そこでゴミ山を漁っている子どもたちに私は衝撃を受けたのです。
本当に劣悪な環境でしたが、もしゴミ山がなくなったら、この子どもたちは仕事がなくなってしまうのです。「どうしたらいいのだろう」と矛盾を感じた私は、帰国後、フィリピンのゴミ山に集まる人たちについて調べました。
すると、彼らは元々ゴミ山周辺にいた訳ではなく、多くが貧しさから逃れようと、地方から仕事を求めてマニラに集まってきたことが分かりました。
確かに、フィリピンの地方一帯は非常に貧しい。しかし、首都マニラでも失業率は50%という高さです。地方出身者の多くは仕事にありつけず、かと言って地方に戻るお金もなく、スラム街、路上やゴミ山での生活を余儀なくされてしまうのです。

ココナッツで地方を元気にできないかと起業

水井:私は、根本的な解決ができる方法はないのか、何とかしてフィリピンの地方を元気にできないかと考えるようになりました。
地方に行ってみると、ココナッツがたくさんあり、飲み物などに使われたり、白い果肉の部分を乾燥させて業者に売ったりしていることが分かってきました。
ココナッツはオイルなどさまざまな製品への利用価値があるのですが、農家の方がたくさんいても、作り方すら知らない状態でした。
そこを改善すれば、都市に行く必要がなくなり、地方での仕事をもっと増やすことができるのではないか、日本にも紹介できるココナッツがあるのではないか、と思ったのが事業を始めるきっかけでした。

それ2004年のことです。ココナッツオイルから事業を始めました。オイルはフィリピンで精製します。

 

 

人々の健康に貢献するココナッツ

藤岡:ココウェルさんの事業は、現地の方とココウェルのみならず、社会にもよい影響をもたらすビジネスモデルだと思うのですが、その内容を教えてください。

 

水井:もちろん、フィリピンの人々の雇用を作り出しますし、その影響は製品づくりなどにも派生していきます。
ココナッツからはさまざまな食材が作られますが、いずれも栄養価が高く、人々の健康に貢献するものです。
オイルとしての利用価値はもちろん、ダイエットや、近年ではアルツハイマー病の認知障害について、ココナッツオイル摂取で改善する食事療法を提唱している医師や専門家もいます。
特にアルツハイマー病の方には、ココナッツなどヤシ科植物の種子の核の部分に含まれる天然成分「中鎖脂肪酸」(ちゅうさしぼうさん)が有効で、さらに、ココナッツオイルに含まれるラウリン酸は免疫力を高める効果があると言われます。ラウリン酸は母乳にも含まれる成分で、乳児が感染症などの病気にならないように含まれていると言われています。摂取する人がさらに増えれば、健康推進に役立つと思います。

 

 

大型台風の被災地を継続的に支援

藤岡:それを商品化し、日本で販売しているということですか?

 
水井:現在あるココウェルの商品は、ココナッツ化粧品と食品や雑貨です。
2013年11月には、「過去に類を見ないほどの規模」とされた台風「ヨランダ」が、フィリピンに甚大な被害を与えました。農業や漁業を主要な産業としていたレイテ島では、台風の被害で田畑は破壊され、ココナッツの木も倒れてしまい、船や漁具も流され、多くの人々が仕事を失ってしまいました。
当初は私たちも、被災地支援基金の設立や一般からの募金に加え、被災した地域に物資を届ける活動を行っていましたが、次第に限界を感じるようになりました。
そこで、継続的な支援が必要と考えた私たちは機械などを現地に納品し、倒れたココナッツの木を利用して、食器や雑貨を作る「ココウッドプロジェクト」を2014年3月に開始したのです。
当社では本場フィリピン産にこだわり、商品の生産はすべてフィリピンで行っています。
フィリピンでは1店舗だけで販売し、基本的な販売拠点は日本です。
販売ルートはスーパーマーケットや健康食品店などで、化粧品はバラエティーショップ(化粧品など多品目の商品を販売する雑貨店)で販売しています。具体的にはロフトさん、東急ハンズさんなどです。
正直、当社としてはあまり営業活動はしていなくて、元々最初にココナッツオイルを扱っていたことから、声をかけていただくようになりました。

伝統的製法を守り、品質にこだわる

藤岡:消費者は商品を一目見てココウェルさんのココナッツオイルとは分からないかもしれません。どのようにして差別化されているのですか?

 

水井:商品に関しては、ココナッツ専門で事業を行っていることと、ブランド性ですね。
パッケージもグリーンで統一していて、伝統的な製法を守り、品質にもこだわります。
品質は日本向けにしていますが、リップクリーム、化粧品は苦労しましたね。
以前はフィリピンに法人を作り、輸出業務を行っていました。しかし、結局手続きが煩雑になるので、その法人は解体し、輸出業務は外注しています。

日本の若者にフィリピンを実際に見てほしい

藤岡:社会に対する取り組みは、やはりフィリピンが中心ですか?

 
水井:はい。私たちは今後もフィリピンの商品を専門に取り扱っていく予定です。
また、「日本の若い人たちにフィリピンを実際に見てほしい」という思いから、通信制高校生に向けてキャリア教育プログラムなどを提供している、認定NPO法人D×P(ディーピー)との共同プロジェクトとして、「ココファンドプロジェクト」を始めました。
これは、中退・不登校などの経験を持つ日本の通信制高校生が、フィリピンの貧困を知るスタディーツアーに参加するための基金を募るプロジェクトです。
ココウェルのリップクリーム「ココファンドリップ」1本を購入いただくと、販売代金のうち、100円が基金として利用されます。
若者たちに、挑戦の場と貧困の現状を知る機会を提供し、フィリピンと日本の若者の未来を少しずつでも変えていこうという取り組みです。
利益はほとんど出ないのですが、2015年春に、初めて高校生1人をスタディーツアーに送り出しました。2015年11月末で売上本数が累計約4,800本に達したので、2016年春には3人の高校生をフィリピンに送り出す予定です。

 

藤岡:ココウェルさんの商品は、大阪ではどちらの店舗で購入できるのですか?

 
水井:大阪市北区梅田の商業施設「LUCUA 1100」(ルクア イーレ)の「梅田 蔦屋書店」さんで買えます。
その他、フェアトレードのお店でも扱っています。

 
藤岡:現在、従業員の方は何人ぐらいおられるのですか?

 
水井:正社員とパート、合わせて21人です。

 

 

夢はココナッツのテーマパーク創設

藤岡:今後は、どのようなビジョンをお持ちですか?

 

水井:ココナッツは、食材としてさまざまな用途に使えます。今後はやはり、カフェで使えるようにしたいと思っています。
また、それぞれの商品パッケージは基本的にゴミになってしまいますから、量り売りをしていきたいですね。ココナッツオイルの量り売りを、日本で行うのが夢です。

あとはフィリピンで、ココナッツ農園や工場を含むココナッツのテーマパークを創ることですね。現地の人々に、ココナッツの素晴らしさを知ってもらえる場所を作りたいです。

 

藤岡:それは立派な事業家ですね。

 

水井:フィリピンだけでしか今まで考えてなかったのですが、他の東南アジアの国でもココナッツを使って雇用を生み出したいという国が多くて。

貧困問題解決につながる仕組みづくりを

藤岡:私は公益財団法人CIESF(シーセフ)で、「国境なき教師団」という活動に取り組んでおり、カンボジア、ラオス、ベトナム、インドネシアで活動をしています。
CIESFは、カンボジアから大変信頼されています。
私たちは無料で日本語を教え、300人くらいが日本企業に就職します。将来的には、0歳児から高校生までの私立学校のような一貫校を作っていこうと考えています。
実は、カンボジアでは学校の数は増えているのです。これは今まで海外の支援団体やカンボジアの政治家たちが、多くの学校を建設してきた結果です。学校の建物の数としては、それほど少なくはないといえます。
しかし、「学校」という建物があっても、そこで教える「先生」がいないのです。
教育は国を支える根本ですから、私たちは教科書の中身から作り、官僚を育てています。
私も発展途上国の可能性などは知っていますし、カンボジアのゴミ山はほとんどなくなりました。子供たちを引き取り、就職させるまで教育もしています。
もちろん地方の田舎に行けばゴミ山はあるのですが、都会付近ではなくなりました。
裸足で活動する子供たちは足をガラスで切ることがあって、傷が化膿し、放っておいたら死に至ることがあります。それが、カンボジアに行って実際に見た責任ですね。
大きなことはできませんが、小さいことを積み重ねて行くことが重要ですね。
教育の質の向上に取り組み、それが新しいビジネスとして形になったり、新しい雇用を産んだりということもありますし、環境問題とは究極のリサイクルを売っていくことですから、環境問題にこだわり続けることは大切だと思います。
本日は、本当に素晴らしい取り組みをお聞かせいただき、ありがとうございました。

【在り方Webより 水井 裕氏【ココウェル】ココナッツを貧困問題解決の光明に

  • Clip to Evernote
  •  
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

<プロフィール水井 裕氏

株式会社ココウェル 代表取締役
1976年大阪市生まれ。2002年に途上国の環境問題を学ぶためフィリピン・ベンケット州立大学へ環境留学。そのことがきっかけでフィリピンの貧困問題に関心を持つ。2004年に就職が決まるが、フィリピンへの思いを捨てられず半年で退職し、株式会社ココウェルを設立。
ココナッツの専門店として、食品から化粧品、雑貨まで幅広い商品を取り扱い、全国のフェアトレードショップ・百貨店などでの販売や、レストランなどへの原料卸を手掛ける。

http://www.cocowell.co.jp/

<インタビュア藤岡 俊雄氏

1961年 大阪府生まれ
2002年 株式会社シーエフエス設立 代表取締役として教育事業を展開
2010年~2016年 450社を対象に私塾代表世話人として、全国経営者、東北・関東・中部・関西・中四国・九州と6ブロックにて塾を開催
2012年 経営実践研究会を創設し理事長就任。各地にて勉強会を開催
2014年 公益資本主義推進協議会、理事、副会長に就任、1100社の会員企業を構築する
2016年 2年の任期満了によりアドバイザーとなる
2016年 経営実践研究会組織つくりをスタートさせる
2017年 全国日本道連盟、幹事長に就任
2017年 (公財)Social Management Collegeプロデューサー
現在、経営実践研究会において、経営者やNPOやソーシャルビジネスを行う企業を組織し、社会変革に挑戦している。
また、企業が本業を通じた社会貢献を行いサスティナブル・カンパニーとなり、企業の社会化を通じ、持続可能な明るい社会を構築するべく講演会や実践活動を展開している。
座右の銘「人を幸せに導けるのは、人しかいない」